2. 視覚の錯覚 見ることは考えること
from 錯覚の科学 ('14)
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2-1. 世界の知覚の方法
目の仕組みはカメラのアナロジー(比喩)で理解
カメラは受動的に外界の光学情報を固定する
人の視覚は能動的に情報を理解し、視覚体験を創り上げる情報処理を行う
知覚は推論である
知覚的推論:知覚とは外界を単に再現することではなく、感覚情報のパターンから「無意識的な」推論を行った結果である。(ドイツの生理学者ヘルマン・ヘルムホルツ)
知覚は最も確からしいことへの賭けである
等価刺激布置群は網膜上では同じ形になる=客観的に唯一の正解が定まらない不良設定問題から1つの解を選択的に導き出し他の解釈を無視する
こうした情報処理ではトップダウンーボトムアップの情報処理が相互に影響しあって補完的に働く(パターン認識)→見えたものの決定
トップダウン処理(概念駆動型):スキーマや予期といった主体的要因(学習要因)から感覚情報を解釈する働きをする。(無意識的推論)
ボトムアップ処理(データ駆動型):網膜に入力された刺激をもとに神経生理的な仕組みによって自動的に特徴を抽出し、それらを知覚体験へまとめる処理過程(特徴抽出)
その他の知覚推論
生態学的視覚理論(ギブソン):環境の中に豊富に存在する視覚にとって必要な情報を網膜像からピックアップすることで環境の知覚が成り立つ。
視覚の計算理論(マー):光学情報から対象を計算して再現・回復する過程である。
2-2. 視知覚情報の変容
奥行き知覚
網膜像は2次元平面の投影像を3次元の立体を頭の中で再構成している。
両眼視情報は両眼視差が有名。しかし両眼視差だけが奥行き知覚を成り立たせているわけではない。(片目閉じても立体)
単眼視情報の代表的なものが運動視差。近くのものは早く、遠くのものはゆっくり動く。
絵画的手がかり:線遠近法(透視図法)。絵画的手がかりは生得的なものではなく、早期の経験によって学習されると考えられている。 ex. クレーター錯視
恒常現象
感覚器が捉える外界の情報が変化したとしても、見ている対象はある程度安定して知覚される現象。
大きさの恒常性:同じ対象の大きさ知覚は網膜像に忠実ではなく、できるだけ同じ大きさで知覚されるように補正される。対象の同一性保持に有利。
位置方向の恒常性:網膜像の揺れに自分の運動情報を加味して補正を行っている。スタビライザー
明るさの恒常性:反射光がほとんどなくても対象が白いことを知っていれば白が知覚される。 ex. チェッカーシャドウ錯視
色の恒常性:光源の色にあまり影響を受けない
形の恒常性:見る位置や角度が変わっても同じ形で知覚される。
錯視
ポンゾ錯視:同じ長さの直線を三角形で囲むと上の直線の方が長く見える。一般的に三角形が奥行き手がかりを作り出すためと言われる。大きさー距離不変説。
月の錯視:地平の月は天頂の月より 1.3~1.5倍大きく見える。人類が体験できる最も大きな錯視現象。地上の風景などの距離手掛かりによって大きさが補正されるという説。